JA 福島県厚生農業協同組合連合会 塙厚生病院

文字サイズ

文字サイズ小 文字サイズ標準 文字サイズ大

福島県東白川郡塙町大字塙字大町1-5

TEL0247-43-1145

塙厚生病院における地域医療研修を経験して

白河厚生総合病院 2年次研修医 江花 英朗

Ⅰ 塙厚生病院における院内研修

白河厚生総合病院での地域医療研修で、1ヶ月間塙厚生病院で研修させていただいた。 塙厚生病院は病床数303床(一般:179床 精神:124床)であり、東白川郡の基幹病院として、地域住民の健康を守り、豊かな地域作りに貢献されている。私が今回の地域医療研修で塙、坂下、高田厚生病院の3病院の中から塙厚生病院を選択した理由は、大きく2つある。1つ目は、過去に同院での地域医療研修でお世話になった先輩方から、地域密着型の医療機関であり、医療従事者と患者との良好な関係の築き方が学べたり、訪問診療や産業医見学など普段の病院研修では学ぶことのない医療を経験でき、大変有意義な研修であったとの話を耳にすることが多かったからである。2つ目は、私が研修している白河厚生総合病院と同じ福島県県南地区の医療を担う病院であったためである。普段から相互協力関係にある2病院間の共通点や相違点について知りたいと思ったからである。病院の規模や職員・患者数の違いが、そこで働く職員の方々の医療に対する姿勢や考え方にどう影響するのかにも興味があった。

実習初日に院長先生とともに病院内の各部署を廻り、研修でお世話になることを挨拶させていただいた。大学病院や大規模な市中病院であれば病院で働く職員、特に直接医療に関わらない方々との関係性は希薄になりがちである。職員一人ひとり、病院のため、患者さんのために一生懸命に働くパートナーであるという認識の下、笑顔で丁寧に私のことを紹介してくださった院長先生の姿が印象的であり、病院の長として理想的な振る舞いであるなぁと感じた。その後、日常業務に移ったが、私の研修は初日から非常に充実したものとなった。まずは、上部消化管内視鏡検査を院長先生とともに経験させていただいた。こちらの内視鏡検査で印象的だったのは先生方がみな患者さんに「苦しくないですか?」、「大丈夫ですか?」等、こまめに話しかけながら検査を進めていく姿である。私はこれまでの研修では内視鏡の手技の獲得ばかりに躍起になり、それを受ける患者さんの不安や苦痛に対する理解が足りていなかったことを思い知らされた。また信頼のおける医師に検査をしてもらえることがどれだけ患者さんの安心や満足につながるかを知ることが出来たと思う。つづいて、院長先生とともにショックと除脈にて救急搬送されてきた高齢女性の診察にあたった。塙厚生病院は前述のとおり、常勤医が17名と決して満足といえない状況であるが、塙・棚倉・矢祭・鮫川の4つの消防署から平成25年1月1日~9月31日までの間に実に500件以上の救急搬送を受け入れしている。これらの地域の救急隊や患者さんがいかに同院を頼りとしているかの現れであり、また医師やコメディカルが地域医療の担い手としていかに責任を持って診療に当たっているかの現れでもあると思う。

一般内科の病棟の回診や外来診療をしていて驚いたのは通院・入院されている患者さんの幅広さである。消化器、肝・胆・膵はもちろんのこと、心不全、肺炎、肺癌、脳梗塞、糖尿病、高血圧などあらゆる疾患を有する患者さんの治療が一人の医師により行われていることに驚き、同時にこれが地域医療の本質であると思った。規模の大きい病院では過重労働やリスクを嫌い、重症患者や診断の不確定な患者を各診療科の医師が敬遠しあう姿がよくみられ、この姿勢が病院内のモチベーションの低下や患者・家族からの不信感にも繋がるのではないかと考えている。専門医である以前に、たとえ専門外であっても医師である以上は眼前の患者に対し何らかの医療的処置を講じるべきであり、何とかしなければという強い責任感が必要であるということをこちらの先生方から勉強させていただいた。

私自身も会津の出身であり、将来的には地元の地域医療に貢献したいと考えている。幅広くさまざまな疾患に対応できる塙厚生病院の先生方は私の将来のロールモデルであると考えている。

Ⅱ 院外研修

(1)産業医業務見学

岡本工業での産業医業務に同行させていただいた。岡本工業は人員:97名の精密金属加工工場であり、自動車エンジン関連部品の旋削全加工などを主に行っている。現場に到着すると施設の方から工場の概要が説明され、どういった機械を用いてどういった部品を加工するのか、素人の私にもわかり易いように詳しく説明を交えながらその過程を見学させていただいた。証明の明るさや騒音の強さなどの作業環境の評価を行い、医師の視点から作業を見られたことは新鮮であった。

(2)訪問診療

内科の塩谷先生の訪問診療に同行させていただいた。訪問診療は往診とは異なり、患者さんからの要請がなくとも一定の間隔で定期的、且つ、計画的に医師が患者宅を訪問し、診療、治療、薬の処方、治療上の相談、指導等を行うものであることを学んだ。訪問先でホームヘルパーの方が清拭を行っている場面に遭遇した、病院や診療所だけでなく、患者さんの自宅でもチーム医療が行われており、患者さんの表情はみな非常に穏やかであった。

(3)介護老人保健施設

「塙厚生病院併設 介護老人保健施設 久慈の郷」の施設見学をさせていただいた。  久慈の郷は、福島県厚生農業協同組合連合会が運営する1999年7月1日に開設された定員100名の介護老人保健施設であり、リハビリテーションを中心とした医療サービスを提供し、在宅復帰を目的とした施設である。施設間での日常業務に必要な食事、入浴、排泄、レクリエーションなどの支援や介助を行っており、多職協働で利用者のため尽力されていた。私が特に関心を抱いたのは、車椅子タイプの座位浴槽である。入浴するたびにお湯を入れ替え、清潔な入浴を実現しており、施設利用者のQOLを大きく向上させる設備であると感じた。

Ⅲ 総括

白河厚生総合病院を離れ、1ヶ月間こちらでお世話になったが、いろいろな方々との貴重な出会いや交流が自分の生き方、考え方に少なからずよい影響を与えたと思う。普段の研修では患者さんの病気の診断や治療ばかり目が向きがちで、患者さんの生きてきた環境、家族構成、今の生活状況などもっと掘り下げて診ていく部分があることに気づかされた。

これから医師として、福島県内のいろいろな病院で働かせていただくことになるが、そのたびにさまざまな患者さんや医師、コメディカルとの出会いがあり、それらの経験を自らの成長の糧にできるように努力していきたい。

塙町に来てから、いろいろな居酒屋や食事処に連れて行っていただいたこともとても嬉しかった。料理も美味しいし、お店の方々もみな気さくで優しそうな方ばかりで、改めて塙町いい町だなぁと思った。

最後になりましたが、このような素晴らしい研修プログラムにご尽力いただきました塙厚生病院の方々や佐川先生をはじめとする先生方、看護師の方々、他関係者の皆様、本当に1ヶ月間お世話になりました。この経験を糧とし、福島県の医療のために貢献できる医師を目指していきたいと思います。